神(咬み)との対話
A Dilogue with God
咬合病患者
先日、私の聴診器の記事が全国各地の新聞(全国紙、地方紙)に掲載されました。
お蔭様にて患者数も増えました。
掲載時には来られなくても、顎関節症(TMJD)の患者さんは、いまだに大事そうにその記事を
切り抜いて持っておられる。
遠くから来られる方もいらっしゃいます。
ただこれらの患者様は、過去に数多くの他院へ、また大学病院へも行かれた方が多いです。
その度にうらみ、つらみが増してきます。
先ず聞くことから入りますが、聞く側としてはかなり、しんどいです。
ただ純粋にTMJを治したいという患者様ならまだいいのですが、いままでの治療に対しての
「恨み」を晴らしに来られる方もいます。 いわゆる 『トランプのババ』 です。この人には、難儀します。
この人、初めはものすごくいいのですが、何か事が起きると、噛みつかれます。
もっともこの種の人は初めから "噛んでやろう" と考えて来られていますので、気をつけないと
いけません。
こんな患者様ばかりでは、人間社会が壊れてしまいます。
しかし、この 物を咬めない ということが、どれだけのことを惹き起こすのか、恐ろしささえ感じ
ます。
虫歯治療のかぶせがとれた、うんぬんというものではなく、うまく咬める様にならなかった時
は、まず〜い事になるようです。
しかし、その人間の技術、技能には限界があり、全てうまくいく ものではありません。
その事を肝に命じなければなりません。
学会参加
ある国際学会に出席していました。
米国のTMJ専門の教授が話しておられました。
"現在の顎運動計測機器を用いても、正確な、的確なTMJの診断は出来ない"と、私もそう
思います。 それは、顎運動計測時に使う被験者の筋肉は、「下顎を移動させる筋肉」です。
よく咬めるようになるには、『よく咬める筋肉』 使用時の顎運動軌道を追跡しなければならない、
と私は考えています。
例えば、歩行時と走行時とでは、使用筋肉は違います。
また日本の若手の歯学部教授が言っておられました。
"咬み合わせと全身状態は無関係である"と。
私の診療所に来られて、よく咬めるようになった患者さんは、肩がこらなくなり、腰痛もなくなっ
た。体の傾きがとれた。頭痛がとれた。耳、眼がすっきりした、等。言われる方が多いです。
ごく簡単な実証として、靴のすり減る場所が変わってきた、と言われる患者様もおられます。
これはあきらかに下顎の位置変動による、体重心の変化であり、確固たるevidenceです。
結果
プロというものは、結果が全てです。
プロゴルファーにしても、swing が理想的で美しくても、score が悪ければ勝てないし、優勝もで
きません。しかし、アマチュアは過程も重視されます。 開業医というものはプロなので、何らかの結果を出さなければ、患者様はついてこられません。
散々文句を言っていた患者様が、ニッコリと元気に帰られる、これを 理想の結果 と考えます。
しかし、患者様の満足度を数値化することはなかなか難しいと感じます。
咬合病の成因
咬合病は歯牙に何かを詰める、被せる、抜歯、といった歯科治療と同時に発生します。薬の
「副作用」 と同じです。
歯牙は、経年的に咬耗(すりへる)します。それにより各個人の咬合を熟成させていきます。
歯牙表層のエナメル質と「硬度」の違うものを歯牙につめれば当然減り方が異なり、徐々に左
右のバランスが狂ってきます。
何かをつめる時に、我々はcheckのため「咬合紙」、(カーボン紙と考えて下さい)というものを
使用しますが、この厚さはミクロン単位です。はっきり言って、この薄さを調整するのは、我々 人間の能力を超えています。
そしてもう一つ厄介なことは、歯牙というものは、個々微妙に動きます。
歯が動く ということを、人為的に良い方向に利用するのが、矯正歯科なのです。
Bridgeを装着すると、そこだけone pieceになります。
顎骨にimplantを打ち込むと、そこだけ動きがなくなるし、そこだけ歳をとらない。
年齢に応じたimplantを考えることも必要かも? 人間は、25歳前後より年齢とともに老化します。 そして implant は、決して主役になってはいけません。あくまでも脇役に徹しないといけません。
主役になった瞬間に 『咬合の崩壊』 が始まります。
こう書いてみると、何もできなくなってしまいますが、これら我々の凡人の業を許してもらえるの
は、神様が人体に与えた許容量、並びに補償機構 なのです。 簡単に言えば、車の『ハンドル の遊び』です。
ビーカーに水を注いでいくと、溢れますが、溢れるまでは、症状は出ません。(宿主抵抗力)
ビーカーの大きさの違いが個体差です。
この個体差は人によって違います。これが計測できるようになれば面白いです。
兎に角、神様を怒らせてはなりません。
咬合とは、前記しました3 pointも重要なのですが、全体的には3次元的な zone で捉えるべき
と、考えています。 顎関節を主にするのではなく、顎運動(顎機能)というものを中心に考え、その中に歯牙、歯
列、顎関節が介在していると、私は考えます。 そして、各々それらの生理的運動限界を超えてはいけないということです。
歯学の教科書に載っている 何々位とか何々咬合位という位置を探し求めても、現実にあまり
役に立たないようにもおもいます。位置の定義自体、時々変わってしまうような位置を探すよ り、『正しい咬合とは?』 ということを定義するほうが、先決とおもいます。 正しいことが決まっていないのに、先に進むことは難しいのでは? 位置を決めれば、 咬合というものを説明できるように考えられているようにおもえてなりません。
では何故、過去より咬合というものを顎関節中心に考えるようになったのか?
歯学教育の中で 咬合器 というものを使用します。 その咬合器の支点が顎関節によく似せてある事、そしてその咬合器というものを信じ過ぎる事が ことの発端でしょう。 咬合器付け加えますに、昔から言われている様に、「奥歯でしっかりものを噛め」ということです。
この事を患者様に実践してもらうことも、咬合には大事なことと考えています。
顎関節は、下顎運動のguide(案内人)なのでは?
やはり常識は覆る
咬みあわせというものは、上下の歯列があり、それが咬みあって「一つの咬合」ができ上がり
ます、というのがわれわれ歯科医の一般的な考えです。
どこか欠損した場合、何かで補おうとします。
しかし、生物学者等の見方では異なったものになるでしょう。
家族旅行でHawaii に行った時、クジラの骨格標本を見ました。
クジラはどのような歯牙をしているのか? 興味を持って見てみました。
見て唖然としました、上顎に歯牙が全くありませんでした。
多分、生きているクジラには、ヒゲのようなものが付いているのでしょう。
ただし、下顎にはびっしりと歯牙がありました。
写真をご覧下さい。
At The Whaler's Village in Maui Aug/2001
ただし、私が見たのはこの一体のみ、クジラ全種が同様かどうか? は調べていません。
私が思うに、クジラはサメと違って物を咬まないのでしょう。
このクジラの下顎の歯牙で彫り物を作っていましたが、値段が高かったので買うのを止めまし
た。
昔は、Hawaiiでたくさんクジラを捕り、鯨油を作っていましたが、保護条約により、今は全く捕っ
ていません。 「常識」というものは、あくまで自分の置かれている社会環境での 考え、感性、のものです。
極端な例ですが、地球上と宇宙では異なるでしょう。
ゴルフ 週刊朝日 増刊号2002.10.30 480yen
東京へ学会に向かう時、新大阪駅で買った週刊誌ですが、ゴルフの話題のみの週刊誌です。
しかし面白いことが多々載っていましたので紹介します。
かみ合わせとスイングの力の関係
参考になればどうぞ。
私自身の事ですが、数年前、ゴルフをしている時、swing の finish になったとき、首に痛みを伴
う電気が走り、その後首が回らなりました。
きっと、自分の swing が悪いのだろうと諦めていましたが、その後2回ほど同じ様になったの
で、ひょっとして、咬み合わせ が悪いのでは? と感じ、検査をして、自分で咬合調整をしました。
それからというもの、その不愉快な症状は出ていません。
その時の使用した splint が出てきて、いま自分の口に装着しますと、いかにズレていたのか、
よくわかります。 記念に?模型を我が待合室に置いています。
咬み合わせの恐ろしさを身をもって、体験しています。
その次に載っていたのが、 足とゴルフ です。
靴の中敷のことについて書かれていました。
次に私の趣味の一つであるスキーのことについて少々書かせてもらいます。
Feb/2008 志賀高原
足とスキー
若い頃スキーに凝っていました。プロを目指し山にもこもりました。
スキーをするには、板、靴、ストックが必要なのですが、最も重要なものは、靴です。
単に立っている時(安静時)ではなく、滑っている時のように自分の膝を前に曲げた時
(機能時) )に、それに bind されているスキー板の滑走面(底面)が雪面とぴったりと合わなければならない。 これをスキー専門用語で「平踏み状態」といいます。 左右どちらの in & outエッジ も立ってはいけない、ということなのです。
特に、out edge が立っては危険です。 高速で滑っている時、このout edge が引っかかると、
操作不能になり、足払いを掛けられたように転倒します。 私は、この「平踏み状態」を咬合に再現すれば よい咬合 ができるのでは?と考えています。
人間の体は左右非対称なので、脛骨の傾きに対してかなり靴の調整が必要です。
私の足は、傾きが変?なので、市販の靴では合いませんでした。
10年ほど前に靴を作ってもらい、それ以降愛用しています。HPを作製し、リンクを申し込んだ際、回答と一緒に次の
mailがきました。「HP読みました、我が父親は、人間魚雷回天の乗組員でした。」 無事のご帰還何よりでした。 これはあくまで 2本足のスキーのことであって、最近の若者がしている snow board の話では
ありません。boardは1枚板ですので考えが異なるでしょう。 私はしないので、解りません。
私がよくスキーをしていた若い頃にsnow board が誕生しました。
初めは異端視され、board全面禁止のスキー場もありましたが、今は、ほとんどありません。
しかし、多くの若者に支持され徐々に市民権を得て、今やスキーと言えば、snow board のこと
になっています。 街で見かける車輪が付いている board と同類項なので取っ付きやすかったのでしょう。
それにスキー場で、boardを着け、まがりなりにも『直ぐに滑れる』のが受けたのでしょう。
2本足のスキーの場合は、滑る以前に、スキーをつけて、まず歩く練習、転ぶ練習をしないと
いけません。 これが、若者には「おっくう」なのでしょう。
boardをしている若者夫婦は子供にもそれをさせます。
若者がするものは後世に繋がっていきますが、若者がしないものは、あとに繋がりません。
よって、2本足のスキーの面白さというものを、若年時に体験してもらうことも、必要でしょう。
Tiger Woods はボランティアで小さい子供達にゴルフを教えています、プロ野球の選手も少年
野球教室を開きます。
技術の伝承もさることながら、自分達の歴史がなくなることを防いでいます。
当たり前かもしれませんが、年配(先輩)の方は、若い人(後輩)をかわいがり、また若い人は
年配の方を敬う、こういう世の中にしないと、社会がうまく回らないのではと、思う今日この頃です。
ゴルフはバランスだ (まんが)
これも掲載されていました漫画ですが、ゴルフのつぼ を完璧に突いています。 ついつい笑っ
てしまいます。ゴルフをされる方の参考になればどうぞ。 これは、space の都合上割愛させていただきます。
骨格筋形成におけるマイオスタチンの役割
最後になりましたが、文献を送ります。
学会で主任教授の森山 啓司 先生が特別講演されているのを聴きました。
その中で、私はこのウシの話に興味を持ちました。
これがうまくいくと、旨いステーキがたらふく食べられるのでは?
申し訳ないですが、難しい事は解らない庶民感覚の私の発想です。
早速、西 真寿美 先生 にお願いして文献をもらった次第です。
西 先生はこれを持って、東京をとばし Swedenにて発表されるそうです。スゴイ !!
諸先生方のご活躍を楽しみにしています。
私が言うのも僭越なのですが、森山 啓司 教授は、たいへん優秀な先生です。
近い将来、歯学部 初のノーベル賞受賞者になられんことを祈念しています。
2002年11月16日
アゴよろず相談所
所長 岸上 尚司
きしがみ ひさし
P.S. 先日、徳島にて森山杯ゴルフに参加させていただきまして、ありがとうございました。大阪の
シングル(JGA 9)は、ジャンボ尾崎(徳島県出身)のコースには歯が立たず、ボロボロでした。
再度挑戦し、医局No.1を目指し がんばんべー。
私を育て、羽ばたき翔ぶ力 をあたえてくれた徳島、四国、に感謝します。
パテントコンサルタント14-11 掲載
私は、時すでに遅しですが、大学数自体の削減をしなければならないとおもいます。2006年現
在、全国に医学部80校に対し、歯学部は29校もあります。我々の親世代が学生の頃には、全 国でたった4校しかなかったようです。医学部の1割の 8校 で十分、多くても10校と考えます。 近い将来この数字に近づいていくでしょう。日本で名門と謳われている東大・京大・早稲田・慶 応に残念ながら歯学部はありません、ある種特異な学部? 世の中から遅れないためにもこ の中にはせめて2つは作るべきでしょう。
2020年頃には歯科界は、構造的にとんでもないことになっているでしょう。
現在、歯科医師約10万人に対して、良い案件(暴力的ではなく、合法的なもの) を公募しては
どうでしょうか? 大口、暴力、妄想の類では何も解決はしない。右向けー右の世界もどうかと 思う。
ついでに医師・歯科医師国家試験について言わせてもらいますと、現在これに合格するため、
1年間も試験勉強するらしいが、この1年間を他学部、例えば、農学部とか、工・理学部とかで 過ごし、単位をとる方が将来のためになるのでは?
最近とても考えられない事件も少なくありません。国際社会的、地球地学的にも、“日本沈没”
を回避するため、各分野においてより良き紳士・淑女的な先導者・指導者が必要とされている 時代とも感じます。 2007年の歯科医師国家試験合格率は約75%、2008年には厚労省によると60%にまで引き下 げるとのこと。これが実行され、持続されると歯学部を目指す者が減り、現状のままでは私学 の大学は定員割れ、学校消滅に陥る所もでてくるであろう。
対策としては、授業料の値下げ、統合、総合大学に頼る、等が考えられる。
入学前に「進路変更」を促すべきでしょう。
何も起きなければ、すべてよかったが、2011年3月の地震、津波による事故により破たんして
しまった。
核燃料は、緊急停止ということができない、その上使用済みの燃料も100年、1000年の単
位で地球の地下どこかに格納、管理しなければならないというが、そのことが将来可能でしょうか。 人類が継続しているか、どうかもわからない。 確実に『負の遺産』となるのでは?
どうも、押し売りから無理に買わされた様にもみえますが?
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