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顎関節症 新編
1996年、日本顎関節学会は、「顎関節症とは、顎関節や咀嚼筋の疼痛、関節雑音、開口障害
または顎運動異常を主要症候とする慢性疾患の総括的診断名であり、その病態には咀嚼筋 障害、関節包・靭帯障害、関節円板障害、変形性関節症などが含まれる。」と定義している。
以下はあくまで私見です、誤解のないようお願いします。
○顎関節症とは? 一言でいえば、『顎関節と顎運動との不調和』と、思います。
日本顎関節学会では、顎関節症をT型からX型まで症型分類し、それぞれ定義付けがなされ
ています。 ただし時々改訂もされます。
分類するということは、何れかに当てはめなくてはならず、最初に入り口を間違えれば、間違っ
たまま進むこともあります。定義を読んでみますと急性という文字がないようにも思います。 ここで私は、急性と慢性 二つのみに分類してみました。
急性から慢性に移行する場合も、その逆に移行する場合も、また繰り返す場合もあります。
●原因として、急性の場合は、顎の打撲(交通事故とか転倒)、顎の酷使、重い物を持ち歯を
食いしばった、硬い物を咬んだ、無理な姿勢、単に下顎を軽くひねった、等が考えられます。
その時に捻挫状態となり、顎関節付着靭帯、筋肉の伸展、関節円板の損傷、等が起こりま
す。それにより下顎は硬直します。
関節円板とは、関節突起と、受けの間にあるクッションです。突起にかかる力の分散化を担っ
ています。
考えるに、靭帯、筋肉を伸展(肉離れ)するには、瞬間的にかなり大きな力(異常力)が必要で
しょう。
一過性の時もあります。これは不幸中の幸いです。
慢性の原因として、過去病歴において大抵急性症状があり、その次に慢性がきます。慢性化
しますと、上記表のように厄介なことになります。患者様は常に顎関節・咬合のことを考えなけ ればならず、精神的にも気が滅入ってしまいます。
●対症療法としては、急性の場合、無理に口を開けず、まず安静にし、痛みがひどい時はそこ
を冷やすことです。 2,3週間すれば開くようになるでしょう。
慢性の場合は、顎関節の前後・左右にかかる力のバランスをとり、『顎関節と顎運動との調
和』をはかることです。特に主な原因となる、顎関節への後方・後上方への異常な力を排除す るようにします。
臼歯部に対し力が大きくかかり、力量の大きな『垂直的なもの』を先に確立し、次に側方運動
時のガイドの設立、作業側、非作業側の確立等、『水平的な治療』をするべきと思います。
バランスがよくなれば自ずと顎運動もよくなります。
慢性化した状態を放置した高齢の患者様には、変形・変性ということも考えねばなりません。
自己回復力が乏しく治療期間も長引くでしょう。
患者様にとっては、難解な理論よりも、痛みなく、気持ちよく咬めればよいのです。
顎関節症関連の数多くの成書を紐解いてみますと、『顎関節の臨床症状と咬合の関連性は乏
しい』、と述べられています。 しかし残念ながら、「顎関節と咬合はたいそう密接な関係にある」と、私は考えます。
岸上歯科・矯正歯科医院
咬合・顎機能研究所
所長 岸上 尚司
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