正常咬合とは? 咬み合わせ? とは、という言葉を耳にしますが、古来より矯正歯科分野で、
「咬合」という言葉に混乱を生じているように感じます。 「咬合」とは、字のごとく咬むという運動のことであり、形態を意味する言葉ではない と筆者は
考えます。
つまり、
●正常咬合とは→うまく咬める。咬むに際し何ら問題がないし、咬むという行動自体を何も考
えたことがない。
●異常咬合とは→うまく咬めない、咬むとすべる、ずれる、片咬みをする、どこで咬めばいいの
か? 咬むと痛い等、咬む度に不都合、不愉快を感じている。
咬む度に 咬むという動作の事を考えてしまう。
しかし、以上の文中に、形、形態がどうのこうのという文章はありません。
数の上においては、正常咬合が大多数を占め、異常咬合はごく少数です。
一般的な数論として、数の関係は 正常数>異常数 です。
過去より矯正歯科治療を受けずに歯並びが良いとされる人は、矯正歯科医から見て100名に
2、3名位でしょう。滅多にないということです。
これは、我々歯科医の中では周知の事実ですし、残念ながら、今現在ほとんどの方は歯並び
が悪いという事です。
矯正分野では、この2、3名のごく少数の歯並びが良い人を正常咬合と言い、数多くの歯並び
が悪い人を異常(不正)咬合と呼んでいます。
しかしこの場合、正常数が少なく異常数がほとんどになります。
前記の数論から、正常と異常の関係は成り立たたないので、矯正歯科分野での正常咬合を、
筆者は矯正歯科の目指す所の誰もが憧れる歯列を『理想歯列』と名付けました。
そして、
矯正分野でいう所の 反対咬合 → 下顎前突、受け口、等
矯正分野でいう所の 不正咬合 → 叢生、上顎前突、歯列不正、等
矯正分野でいう所の 正常咬合 →『理想歯列』
まとめると、矯正分野でいう所の 反対、不正、正常、何たら咬合とは、静的なもの。 というように、矯正歯科分野において、「咬合」という文字を使用しない方が、混乱を避けられる
のでは? と考えます。
●形態と機能について。
悪い= 姿・形・場所(位置)・色が悪い →例:不細工な形
○形態的に
良い= 姿・形・場所(位置)・色が良い →例:美人 、ハンサム
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悪い= 働きが悪い、動きが悪い →例:肝機能異常、異常値
○機能的に
良い= 働きが良い、動きが良い →例:胃が正常、正常値
形態とは、感覚特に視覚、触覚でとらえ得るものの有様。いわゆる外見に現れた姿であり、
機能とは、働き、動き、と言えます。
形態と機能とは、同調もしていますが、形態≦機能の状態でなければならない、と考えます。
簡単な例として、美人の人において性格が良いとは限らない。 顎関節症の治療に際し、筆者はミクロン単位の調節をしています。
歯科矯正治療では、前記した『理想歯列』の獲得のため、ミリ単位で歯を動かすが、「咬合」と
いうものに対し、より繊細な注意が必要かとおもいます。
Oct/01/2012
岸上 尚司
Hisashi Kishigami
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